盂蘭盆会とは、陰暦7月15日(今の暦では、8月15日)を中心に行われる先祖供養の法要です。
「盂蘭」とは梵語(ぼんご=中期インド語の総称)で、意訳すると「倒懸」(とうけん)といって「さかさづりの苦しみ」という意味があり、大きな苦痛をあらわしています。
『盂蘭盆経(うらぼんきょう)』には、釈尊(しゃくそん=お釈迦さま)の十大弟子の一人である目連(もくれん)が、餓鬼道(がきどう=むさぼりの強い者の死後の世界)に落ちた母の苦しみを救おうとして、釈尊の教えに従って祭壇(さいだん)を設け、三宝(さんぽう=仏〈悟りを開いた人〉。法〈仏の説いた教え〉。僧〈仏の教えに従い成仏を目指す出家者〉)に供養したところ、母が苦しみから解き放たれ救われたということが説かれており、これが盂蘭盆会の起源であると伝わっています。
このように盂蘭盆会はインドを発祥とし、それが中国に渡り、日本に伝わったものです。日本では西暦600年頃から朝廷の公の仏事として始まったようで、諸大寺から次第に民間の寺院へと普及し、今日のように全国津々浦々の風景として定着しました。
盂蘭盆会は、もともとは中元(ちゅうげん=陰暦7月15日)の節目に先祖を供養することと混同され、旧暦(7月)、新暦(8月)に行うなど地域によって異なり、期間も一定していませんが、現在では新暦の8月13日から15、16日までを「お盆」とするのが一般的です。
日蓮聖人(1222~1282)が弘安2年(1279)に著された『盂蘭盆御書(うらぼんごしょ)』には、盂蘭盆経における目連尊者の説話が取りあげられていますが、当時どのような形で盂蘭盆会が奉修されていたかは具体的に記されていません。
しかし、弟子の日興上人(1246~1333)のお手紙には、毎年お盆の際には日蓮聖人を奉った御宝前(ごほうぜん=日蓮聖人の顕わされた曼荼羅本尊や日蓮聖人御影像が安置されている)に種々のお供えをし、弟子・檀越(だんのつ=信者)が寄り合って盂蘭盆会を営んだと記されています。
私たちの門流においては、盂蘭盆会に際して御宝前と精霊に季節の野菜や果物などを供え、また塔婆(とうば)を建立し、先祖の供養はもちろん、日興上人の姿勢に学び、本仏・日蓮聖人へ更なる精進をお誓いし、読経(どきょう=法華経の方便品と寿量品)・唱題(しょうだい=南無妙法蓮華経)の修行を勤めています。
さらにこの時期には、お経回り(おきょうまわり=僧侶がご信者の家でお経を唱える)やお墓参り(寺院で建立した塔婆や供物などをお墓にそなえ、しきみ・線香・水をあげ、読経・唱題をする)がおこなわれています。
『盂蘭盆御書』に「信ずる法は法華経なり」とあります。古来より当門流では「常盆常彼岸(じょうぼんじょうひがん)」といって、常日頃からお盆やお彼岸の心構えで南無妙法蓮華経と唱題に励み、精進することが信仰の要であると言い伝えられています。